教員ブログ大学院

臨床検査学ユニット紹介_ALSの新たな検査を作る研究

2017年09月28日

 
 こんにちは、臨床検査学ユニットの荒川です。臨床検査学ユニットでは、臨床検査技師として実際に働いていた先生方が各自の専門分野に関する研究テーマで研究活動を行っています。また、研究だけでなく、臨床検査技術の学問的背景について議論を深め、医療現場で即戦力となれる人材の育成を目指しています。
 私は、臨床現場にいた頃は遺伝子検査担当の臨床検査技師として働いており、現在では検査技師教育及び研究活動を行っています。今回は、私の所属する研究グループが現在行っているALS研究について紹介したいと思います。
 ALSとは、日本語では筋萎縮性側索硬化症という進行性の神経疾患で、四肢の筋力低下や嚥下障害など様々な運動神経障害症状を呈する反面、感覚障害や眼球運動障害等は示さないという疾患です。この疾患の原因は、遺伝子異常や環境因子など様々な報告がありますが、根本的な原因は不明とされています。我々の研究グループは、紀伊南部におけるALS多発地とされる地域で住民の健康調査を行い、研究への同意を得られた方々のサンプルを用いて、ALSの多発原因を探ることから発症原因の一端を明らかにしようとしています。今までに、我々は酸化ストレスや生体内微量元素と多発地におけるALSとの関連を報告しています。また、ALSには確定診断のための血中バイオマーカーが存在しないため、現在、臨床所見や病歴及び電気生理学検査や神経病理学検査によって診断されています。そのため、症状が進行した状態でしか確定診断ができず、治療が遅れてしまいます。そこで、我々は早期診断、早期治療に繋がる新たなバイオマーカーを見つけることも研究目的としており、現在は、蛋白質の産生を制御する小分子であるmi(マイクロ)RNAに着目し研究を行っています。このように我々の研究グループは、臨床検査学ユニットだけでなく鍼灸学ユニット、理学療法学ユニットの先生方も参加することで、幅広い視点から意見交換を行い、多岐にわたる研究をすすめています。
 臨床検査学ユニットには、様々な専門分野で活躍されている先生方が在籍され、大学院教育にあたっておられるため、研究や臨床検査についての多様なお話を聞くことで、とても刺激になり勉強しやすい環境だと思います。興味のあるかたは是非、私たちと一緒に研究をしましょう。

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鍼灸学ユニット坂口研究室紹介_冷え症の鍼灸治療で社会に貢献

2016年12月02日

 こんにちは。鍼灸学ユニットの坂口俊二です。私は本学の前身である関西鍼灸短期大学の第3期生で、卒業後は同研修員、附属鍼灸治療所鍼灸師を経て教員となり、はや四半世紀が経ちました。
 大学教員には臨床・教育・研究の全てが求められるのですが、これらは決して独立しているものではなく、関連し合っています。臨床とは、私にとっては鍼灸師として附属鍼灸治療所で患者さんの治療を行うことで、ここには実習として主に4年生の学生が入ってきます。臨床と教育がリンクしているのです。また、臨床で得られた効果を研究で検証し、それがエビデンスとなり、鍼灸師、患者さんの双方にとって適切な情報源になっていきます('一般化')。このサイクルの全てに関わることのできる教員にはとても魅力を感じています。
 さて、今回は研究室の紹介がテーマですので、私達が現在行っている冷え症研究について少し紹介します。
 冷え症は日本では社会通念として存在し、特に女性の約半数が手足や全身などの「冷え」を訴え、さらにその中の約20%が「冷え」が原因で日常生活に支障を来しており、これを「冷え症」と呼んでいます。ただ、西洋医学では、「冷え症」を病気ではなく、不定愁訴の一つとして捉え、積極的な治療が行われていないのが現状です。さらにこの時期、冷え症に対する健康食品や各種商品が多く販売されていますが、その効果は必ずしも適切に検証されているわけではありません。一方、漢方薬と鍼灸を両輪とする東洋医学では、「冷え」を診断・治療の重要な指標とし、そこから進展した「冷え症」に対し、漢方薬や鍼灸を使って積極的に治療をしてきました。これまで多くの症例においてその有効性が示されてきましたが、その研究手法は充分とは言えず、エビデンスとして示すまでには至っていません。
 そこで、本研究室では、北里大学東洋医学研究所の伊藤剛先生の研究に着目し、冷え症者の身体各部の体温測定を厳密な環境下で行うことで、冷え症を4つのタイプに分類することに取り組んでいます。さらに、そのタイプに合わせた治療部位('ツボ')を選択し、そこに鍼治療を行っています(写真は治療室の様子です)。この研究はランダム化比較試験という研究デザインで行い、ここで得られる結果はエビデンスが高いとされています。上述したように成果の一般化に向けて大事な関門と言えます。この実現に向けて院生はもちろん、鍼灸学ユニットの教員、さらにはユニットの垣根をこえ多くの教員とともに今まさに奮闘中です。この研究は年明けからデータ入力・解析へと進み、修士論文としてまとめられていくことになります。院生の成長に大いに期待しています。
 ちなみに本大学院ではユニット全体で院生を教育しています。鍼灸学ユニットには鍼灸以外の分野を専門とする教員もいますので、検討会ではいつも熱い議論が行われます。その中に身を置くことで、院生も広い視野を持ち研究者としての第一歩を踏み出すことができるのです。

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理学療法学ユニット谷埜研究室紹介_理学療法に役立つ研究

2016年07月04日


 こんにちは。理学療法学ユニットの谷埜予士次です。理学療法士の方は、患者さんの基本動作を改善させて社会復帰やQOLの向上に貢献できるように日々努力されているものと思います。理学療法は様々な疾患によって生じた障害を対象としていますので、それらに関連した研究分野も多岐にわたります。私は主に運動器疾患に対する理学療法を専門にしていますので、研究においてもそれに関連したものになっています。普段の臨床で患者さんに行っている筋力強化練習の方法はこれでいいのか?もっと安全で効率よく行うにはどうしたらいいのかなど、そんな素朴な疑問を持たれた方のお役に立てればと思っています。
 研究室では院生、学部生と共に筋電図、動作解析装置、筋力測定器などを用いた身体運動学的研究を行っています。この春に修了した院生は普段の臨床場面での歩行練習に活かしたいという理由で歩行の運動力学的研究を行ってくれました。具多的には歩行時の下肢関節トルクについてです。少し専門的になりますが、関節トルクは剛体リンクモデルを作成し、そこに力学的データ(地面反力)を用いて逆動力学的に求めることができます。動作解析装置を使うとこの方法で簡単にトルクが算出されますが、大切なのは、なぜこのような方法で関節トルクが計算できるのか?です。研究では自分の用いているツールや研究手法について充分に理解しておく必要があります。そうすることによって、得られた結果から臨床に応用できること、即臨床応用することは難しく(研究の限界があって)、更なる検討が必要であることなどがわかってくるものだと思います。院生にも理解してもらう目的で、時には手計算で関節トルクを算出してもらいました。
 私もまだまだ勉強中です。みなさんの柔軟な発想をもとに、一緒に勉強し、理学療法に役立つ研究をしていきたいと思っています。

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鍼灸学ユニット木村研究室紹介_鍼灸の研究の面白さ

2016年04月01日

 
 こんにちは、鍼灸学ユニットの木村研一です。鍼灸は腰痛や肩こり、膝痛などの運動器疾患や高血圧や冷え症などの循環器疾患、便秘や胃痛などの消化器疾患、不妊症などの婦人科疾患や排尿障害、EDなどの泌尿器疾患など多岐にわたる疾患や症状に対して用いられています。最近ではしみやしわ、むくみの改善、リフトアップなどの美容を目的とした美容鍼灸も盛んです。
 一方、皆さんはエビデンスといった言葉を聞いたことがあるでしょうか?ニュースや新聞で聞いたことがあるかもしれませんが、政治や経済など色々な場面で用いられる言葉です。医学の世界では科学的根拠という意味で用いられます。現代医学では科学的根拠に基づく医療(Evidence Based Medicine:EBM)が基本になっています。伝統医学のひとつである鍼灸にも現在、EBMが求められています。そのためにはEvidenceを科学的な手法で示す必要があります。具体的には特定の疾患や症状に対して鍼灸治療が有効であるということを検証する臨床研究や、何故、鍼灸治療に効果があるのかというメカニズムを明らかにする基礎研究の両者が必要です。
 木村研究室では大学院生や課題研究の学生さんと一緒に鍼灸が皮膚や筋の血流に及ぼす影響やなぜ、血流が良くなるのかという点に着目して研究を行ってきました。何故、血流かというと、鍼灸治療によって血流が良くなることで肩こりや冷え症が改善すると一般的に考えられているからです。しかし、科学的な検証は乏しいのが現状です。これまで私たちは近赤外線分光法という方法を用いて鍼灸治療のひとつである低周波鍼通電療法が筋組織中の酸素化ヘモグロビン濃度に与える影響を検討しました。結果、通電中は筋組織中の酸素化ヘモグロビン濃度は低下し、通電後は酸素化ヘモグロビン濃度が増加しました。すなわち、低周波鍼通電療法では置鍼(鍼を刺入したままの状態で置く方法)での報告と異なり、酸素化ヘモグロビン濃度は通電中に低下し、通電後に増加する二相性の反応を示すことが明らかになりました。また、マイクロダイアリシスという方法を用いて置鍼や温灸による局所の皮膚の血流増加には血管拡張物質である一酸化窒素が関わっていることも報告しました。これらの研究成果はあくまで鍼灸の治療効果のメカニズムの一端だと思いますが、こうした積み木のような地道な研究の積み重ねが鍼灸のエビデンスの構築につながると思っています。研究をしていると思うような結果がでなかったり、全く予想と異なる結果がでることが往往にしてあります。研究を進める度に新しい疑問もわいてきます。是非、本学の大学院に入学して頂いて、鍼灸の治療効果のメカニズムについて一緒に研究しましょう。

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