運動イメージ後にパフォーマンスが向上することは経験的によく知られており、運動イメージ練習の効果を示すシステマティックレビューやメタアナリシスも増えつつあります。しかし、運動イメージ効果に関する神経生理学的メカニズムについては十分な科学的根拠が得られていないのが現状です。
運動イメージ練習のエビデンスを確立させるためには、その神経生理学的メカニズムの解明が重要です。特に、随意運動や運動機能の向上には、中枢神経に加えて、運動出力の最終共通路である脊髄神経機能を高めることが重要であることから、運動イメージ時の脊髄神経機能の検討が必要となります。

関西医療大学の文野住文准教授、鬼形周恵子助教、鈴木俊明教授は、運動イメージと脊髄神経機能をテーマに、脊髄神経機能を評価する指標であるF波を用いて、様々な条件下での検討を行ってきました。
数々の先行研究から、運動イメージは脊髄神経機能を高める有効な治療法であることが分かりました。具体的に運動イメージ練習の効果を上げるためには、単に頭で運動を想起させるのではなく、獲得させたい運動に近い肢位で行うこと、関節が動く感覚や筋が収縮する感覚をイメージした方がよいことが分かりました。また、臨床において高強度の筋力を発揮することが難しい症例においては、最大努力の10%など、軽度の筋収縮強度の運動イメージでも十分に脊髄神経機能を高めることが可能です。加えて、高齢者や脳卒中患者においては、そもそも目的とする運動を鮮明に想起することが困難であることが多く、そのような場合、鏡やビデオを用いて運動を観察しながらイメージを行うことで脊髄神経機能をより高めることができます。
次に、先行研究結果を臨床場面に応用するために、最大努力下での運動イメージが筋力に及ぼす効果について検討したところ、50%収縮強度の足関節底屈運動イメージを行った直後に足関節底屈トルクが増加したことから、最大努力下での運動イメージは即時的に筋力を増加させることが明らかとなりました。

これまでの先行研究で得られた結果は、運動イメージ練習のエビデンス確立に向けて重要な知見になると考えています。書籍は発刊準備中ですが、早期公開されておりますので、是非ご一読ください！