2020年01月10日
知識の半減期を考える(臨床検査/矢野)
保健医療学部 臨床検査学科 矢野 恵子
“半減期”と聞いて皆さんは何を思い浮かべますか?半減期の定義は「物質やその能力や機能、濃度などが、代謝などによって半減するまでに要する時間」とされており、生物学的半減期と物理学的半減期とに大別されます。
まず、生物学的半減期は、生体内に入った物質が代謝や排泄によって半分に減るまでに要する時間を示しています。血中薬物濃度を例に挙げると、半減期が短いということは薬物が素早く代謝・排泄されることを示し、結果、薬の効き目も短くなり、半減期が長ければ、薬が作用する時間が長いことを意味します。よって、薬の半減期は投与間隔を決める重要な目安とされています。つぎに、物理学的半減期は、放射性物質が崩壊し放射能が元の半分に減るまでに要する時間を示し、放射性物質の人体への影響には、物理学的半減期だけでなく体内への取り込まれやすさや生物学的半減期、放射性物質の種類などによって総合的に決められます。医療においては、PET検査やアイソトープ治療などで放射性医薬品が用いられています。
では、知識にも半減期はあるのでしょうか。私たちは書物や体験から多くのことを学び、必要に応じて引き出せるようになります。そして、繰り返し学んだり経験したりすることで、知識が深まります。そこには記憶するという現象が関わるのですが、その精度には印象の程度という要素が加わります。成功体験はもちろん貴重ですが、学生のみなさんは間違えることにネガティブな印象だけを抱いていませんか?間違えるという事象が強い印象を与えて、記憶が鮮明になるという側面もあることを忘れないで欲しいと思います。在学中はたくさんのチャレンジをして、失敗の経験も積んでください。そうすることによって知識の半減期は長くなり、さらに積み重なっていくことでしょう。
医療職は常に患者さんの期待に応えることが求められますが、そのことをやりがいと感じ、生涯、学び続けることに真の喜びを見いだせる人になって欲しいと願っています。