2020年03月06日
技術について考える
はり灸・スポーツトレーナー学科
寺岡祐助
本学に興味を持っていただいた皆さん、いつも本学の教員ブログを見ていただき有難うございます。
私は鍼灸師ですが、スポーツトレーナー分野の授業を多く担当しています。どのような病気に鍼灸が効くのか?スポーツの中で鍼灸師はどのような役割を果たすのか?そういった話を聞く機会はたくさんあると思いますので、今回は鍼灸とスポーツを違った視点でお話します。
部活動や地域クラブでスポーツをしている皆さんの中には試合中で自分のプレーだけに集中できる局面があると思います。サッカーでのPKやバスケットボールのフリースロー、短距離走のスタート…など、もちろんそれ以外にもたくさんあるでしょう。その局面で皆さんはどのようなことを考えていますか?「ミスしないように…」や、「足首をしっかり固定してボールに当てよう」など様々だと思います。鍼灸師である私も鍼を打つ瞬間に同じ様なことを考える時期がありました。できるだけ患者さんには嫌な痛みを与えずに鍼治療をしたいので、ミスを恐れて手先のことばかり考えていたことを思い出します。
私がとても感動した本に『弓と禅』があります。著者はドイツ人学者のオイゲン・ヘリゲルです。この作品は、著者が日本での長期滞在で弓道を習った過程を記録したものです。作品では、なかなか上達せず、師範の教えを理解しようと葛藤する著者の姿がとても印象的に描かれています。その教えに「的を射るという目的を考えずに的を射る」といった内容がありました。?マークが飛び交いますが、要するに「自分の動作から意識を離しましょう。何も考えずに体が勝手に弓を射る一連の動作ができるまで鍛錬しましょう。」ということです。動作の瞬間に何かを考えてしまうのは、まだまだ鍛錬が足りないということを意味します。私の鍼灸治療の経験のなかでも、鍼を打つ一連動作を何も考えずに行えたとき、鍼施術が上手くいくことが多いように感じます。皆さんのスポーツの局面ではそんな体験ありませんか?
何も考えずに行うことが良いのではなく、何も考えずにできるようになることが大切なのでしょうね。皆さんのプレーにも取り入れてみてください。私も鍼灸師としてまだまだ精進したいと思います。
※写真は(おそらく)私が何も考えずに鍼を打った瞬間の1枚です。