2017年09月22日
大学進学とその先にあるもの
はり灸・スポーツトレーナー学科 池藤仁美
大学進学の際、その先にある「将来の仕事」を考える人がほとんどだと思います。ところが、今、その仕事に大きな変化がみられています。Webや雑誌などで、「仕事には、将来、なくならない仕事となくなる仕事がある」という見解があります。きっかけは、2013年にオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン博士が発表した論文でした。オズボーン博士は、AI(人工知能)研究のスペシャリストで、702の職種について将来コンピューター化される確率がどれだけあるかを示しました。その論文を元に、コンピューター化される確率が低い職種を「なくならない仕事」、逆に確率の高い職種を「なくなる仕事」として発表、多くの人に衝撃を与えました。
この論文が発表されたのは2013年です。そこから10年後は2023年、20年後は2033年と、もう目前に迫りつつあります。皆さんが大学を卒業する頃には、そういう時代を迎えている可能性が高いということです。すでに起こっているのが、スーパーマーケットでのセルフレジや大病院での精算の機械化などです。全てではないですが、以前は人がやっていた仕事を機械が代行できる時代になりつつあるということです。AIは対人間で、1988年にチェスで勝利、2016年に「最後の砦」といわれていた囲碁でも勝利しました。今後、オズボーン博士が予想したような世界になる可能性は十分考えられるのではないでしょうか?
では、私たちがめざす「鍼灸師(Acupuncturist)」・「アスレティックトレーナー(Athletic trainer)」はどうなのでしょうか?幸いにも、コンピューター化される確率の低い職種の上位に入っています。コンピューター化される確率の低い職種の上位には、英語で「~er」、「~ist」がつく、スペシャリストが多いのが特徴です。このような職種は、人としての専門性や経験がそのまま仕事になっているもので、知識や知能だけでなく、経験から生み出される特性がつまっています。人の衣食住をよりよくするサポート、人の心身を癒やし、寄り添うなどの「人間に豊かさをもたらすことができる仕事」というのは、コンピューターでは難しいということです。
私も、鍼灸治療所で「鍼灸師」として患者さんを診ます。施術をするとよくわかりますが、同じ疾患でも症状が異なります。それには、患者さんがもつ性格・心情・生活背景・社会環境などの様々な要因があります。私たち鍼灸師は、その違いを理解し、施術し、患者さんをよりよい状態に導くことを目指します。これは、AIでは難しいことなのかも知れません。
将来「無くならない職業」、AIに代行されにくい「スペシャリストの職業」を目指しませんか?