2020年07月03日
スポーツ再開の裏側には…
はり灸・スポーツトレーナー学科 内田靖之
皆さん、こんにちは。
このブログが掲載される7月初旬にはプロ野球・Jリーグが開幕しています。ようやくコロナ禍での「新しい生活様式」にスポーツを含める余裕が出てきたところでしょうか。とはいえ、現地での観戦はまだまだ試行錯誤が必要でしょうし、スポーツを心から楽しむことができるのはもう少し先のことでしょう。
ところで、このような前例のない事態にスポーツ現場はどのように対応してきたのでしょうか?最も前例に近いとされるのは、2011年アメリカンフットボールリーグ(NFL)が三ヶ月間ロックアウトされた時です。このときは契約を巡る選手側と機構側の交渉によって中断されたようです。実はこの時、これまでのシーズンでは年間数例の発生であったアキレス腱断裂が、再開後最初の一ヶ月で12例発生したという報告がありました(GD. Myer, et.al. 2011)。この前例は、長期間の不活動が筋・腱のケガを増やすということを示してくれています。しかしながら、この報告が活かせず、今年、世界でもいち早く再開したブンデスリーガでは直後からケガが続出してしまいました…
スポーツの再開にはケガだけで無く、感染症を含む様々な対策が必要です。現在、国内外を問わず、多くの競技団体やトレーニング団体が復帰プロトコルを含むガイドラインを作成し提供してくれています。分かりやすくまとめられているのは、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー部会のガイドラインでしょう( 下記※をご覧ください )。このファイルには、多くの競技団体が出しているガイドラインもリンクされていますので、ご自身の競技団体を探してみてください。これらのガイドラインを自チームに当てはめ、医療スタッフやコーチングスタッフと相談しながら復帰プロトコルを作成するのもアスレティックトレーナーの仕事なのですね。新たにケガをしないよう、スポーツ活動に復帰できるよう働きかける、予防の観点に従ったアスレティックトレーナーらしい仕事といえます。更にこのガイドラインには、「熱中症予防」への言及も多くみられます。例年、この時期から熱中症が多く見られていること、更に通常であれば「暑熱順化」という暑さへの身体適応がみられる時期だからです。今年の夏はいきなり暑い中で活動することが求められそうです。徐々に身体を動かすことに加えて、暑さへの対策も忘れずに!
【参考文献】
・Myer GD, Faigenbaum AD, Cherny CE, Heidt RS, Hewett TE. Did the NFL lockout expose the achilles heel of competitive sports? J Orthop Sports Phys Ther. 2011;41(10):702–5.