2022年04月01日
等尺性収縮を用いた運動イメージは 脊髄運動神経機能の興奮性を高めることができる(鈴木俊明)
皆さん、こんにちは 理学療法学ユニットの鈴木俊明です。
私の研究室は、教員、研究員、準研究員の皆さんと一緒に研究をしています。研究テーマの一つに運動イメージの研究があります。今回は、私たちの最初の運動イメージの研究について紹介します。
まず、研究をしている様子の写真をご覧ください。研究は健常者を対象としており、次のような順番で行いました。まず、母指と示指でピンチメーターの圧センサーを持って最大のピンチ力を測定します。次に最大のピンチ力の50%の力で発揮する練習を行います。上手に50%で筋発揮ができた段階で、圧センサーを軽く把持した状態で、先ほどの運動を頭の中でイメージをしてもらいます。
このような状態で、F波という波形をピンチ動作に関連する筋より記録します。この波形は、末梢神経(今回は正中神経)に電気刺激を与え、脊髄に到達して、再度、末梢神経を経由して筋で記録できる波形です。F波の波形の大きさから脊髄運動神経機能の興奮性の状態を表していると言われています。今回の研究での代表的なF波波形を見ていただきたいと思います。安静時のF波の波形の大きさと比較して、圧センサーを軽く把持するだけのF波の波形の大きさが大きくなっていることがわかると思いますが、運動イメージを加えるとさらにF波の波形が大きくなることがわかると思います。
この結果から、筋に麻痺があるために、筋を収縮することができない患者さんへの運動療法には、運動イメージの練習を積極的に行うことで効果を認める可能性があることを示しております。
今回紹介させていただきました研究の内容は、
Suzuki T et al, Excitability of Spinal Neural Function during Several Motor Imagery Tasks Involving Isometric Opponens Pollicis Activity. NeuroRehabilitation 33:171-176, 2013
に掲載されています。
また、私の研究グループの運動イメージの研究、運動観察の研究をまとめたものとして以下のような書籍があります。
鈴木俊明 監修『運動イメージ・運動観察の脊髄神経機能とリハビリテーションへの応用』
(電子書籍 改訂版、編集工房ソシエタス 東京 2020)
この書籍には、多くの本学教員に関わっていただいております。是非、ご覧ください。