2022年05月27日
なぜ、内側広筋のトレーニングにこだわるのか?(谷埜予士次)
理学療法学ユニットの谷埜です。
私は理学療法士として、膝関節術後患者さんの治療をする機会があります。
“よく曲がる” “しっかり伸びる”膝を目指すことが大切で、しっかり伸ばすためには大腿四頭筋の筋力トレーニングが必要不可欠となります。そのため、大腿四頭筋の筋力トレーニングに活かすための研究をしています。
理学療法士は大腿四頭筋の中でも内側広筋、特に膝蓋骨に近い遠位部の筋力が十分に発揮できるようなトレーニングをよく行っている印象を持っています(Smith O et al. Can vastus medialis oblique be preferentially activated? A systematic review of electromyographic studies. Physiother Theory Pract 25(2):69-98, 2009という論文もある)。しかし、その部分は筋線維の走行からみて膝を伸ばす作用を持っていないのです。それでも内側広筋の筋収縮を促すことで、膝を伸展する筋力が改善しますし、運動・動作も良くなります。この一つの要因として、膝蓋骨が安定化されることが考えられます(誘発トルクで検討 Tanino Y et al. Function of the Distal Part of the Vastus Medialis Muscle as a Generator of Knee Extension Twitch Torque. J Funct Morphol Kinesiol 5, 98, 2020 doi: 10.3390/jfmk5040098 )。その他には、他の筋との協調性が良くなるのでは?と考えています。この筋肉間の協調性について検討することが現在の研究テーマであり、筋電図学的(動作・誘発)、運動力学的解析を行っています。詳細はここでは述べることができませんので、興味のある方はご連絡ください。
理学療法に役立つ研究を一緒にできればと思っています。
誘発トルク実験の様子 低周波電気刺激(EMS)用いて内側広筋の遠位部のみを疲労させる前後で、大腿神経刺激による膝伸展誘発トルクを記録し、内側広筋の遠位部が膝伸展の筋力発揮にどの程度貢献しているのかを検討した。