2023年04月07日
F波の波形は興味深い (鈴木俊明)
こんにちは, 理学療法学ユニットの鈴木俊明です。私は脊髄神経機能の興奮性を誘発筋電図の一つであるF波を用いて様々な現象を研究しています。今回、麻痺側母指球筋の高度な筋緊張亢進を認めており随意運動は全く不可能である脳血管障害患者のF波を測定しました。運動療法は、週2回20分、8ヶ月間、麻痺側母指球上の筋群のストレッチングを中心に行いました。そして、運動療法前後のF波波形の変化を調べました。8ヶ月間の運動療法により,筋緊張はやや改善し,麻痺側母指の随意運動は軽度可能となりました。しかし、F波のデータには改善が見られませんでした。
F波は痙縮の程度を反映するともいわれているために、この患者の筋緊張亢進の主たる要因は痙縮よりも二次的な筋短縮により運動ができない可能性が高いと判断しました。また、約20ms(M波とF波の間)にF波と思われる不明瞭な波が1回目では見られましたが(Fig.1 First TrialのUnclear wave)、運動療法8ヶ月後の2回目では見られませんでした。運動療法では筋緊張の改善がみられ、不明瞭な波が出現しなかったために、この不明瞭な波形の存在も筋緊張亢進に関係したことが考えられます。今後も同様な症例を確認していき、F波波形の解析に役立てたいと考えています。
この内容は下記に掲載されています。よければご一読ください。
The Importance of F-Wave Patterns in a Patient with Cerebrovascular Disease Characterized by a Markedly Increased Tone of the Thenar Muscles. Suzuki T., Fukumoto Y., Todo M., Tani M. and Yoshida S. Case Rep. Neurol.,14:427–431(2022)
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現在、私が研究科長を務めている本学大学院の修士課程は開設以来、多くの修了生が誕生し、保健医療分野でリーダーとして活躍してくれています。また、修了生からは「本学大学院に博士課程があれば是非進学したい」という声もいただいております。今回、そのような背景から、令和6年度開設を目標として大学院博士後期課程の設置を目指して準備しております。大学院博士後期課程の設置の状況についてはホームページでお知らせいたします
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