2023年06月16日
神経難病のQOLの向上をめざして (河本純子)
理学療法学ユニットの河本です。神経難病という言葉を聞かれたことがあると思います。<難病>という言葉を聞くだけで、重く、辛い気分をイメージする方がいらっしゃるかもしれません。医学が進歩した今日でも未だに原因がはっきりせず、根本的治療がなく、進行していく疾患にどう立ち向かっていけばよいかわからず途方にくれる患者さん達もいます。もちろん、だれでも発症する可能性があるわけで、決して他人ごとではありません。
私は、以前ALS(筋萎縮性側索硬化症)の原因究明に関する研究を行っていました。
最近は、神経難病のQOL(Quality of Life;生活の質)について、特にパーキンソン病やスモン病についての研究を続けています。
①パーキンソン病について
PDQ39( Parkinson’s Disease Questionnaire-39)というイギリスで開発されたパーキンソン病の評価法があります。これを日本人に適応できるように、多くの方々のご協力を得て日本語版を作成し、約150人のパーキンソン病患者さんを対象に、そのQOL評価法の日本人への適用の妥当性を検討した結果、内的整合性や妥当性を有することが認められ、現在PDQ39 日本語版として国内でも広く用いられるようになりました。PDQ39日本語版は、活動性、ADL,、情緒的健康、社会的支援等々の8つの分野を39項目に分けた質問票で、パーキンソン病に特異的なQOL評価法です。
QOLの評価票は作成した時点からがstartです。
もちろん治療の現場で有用であることは言うまでもありません。これは、患者さんのさまざまな心身の状態、社会的な状況等々をはかり知る重要なツールになります。
神経難病だけに限りませんが、原因を究明し、治療を続けながら、同時に患者さんのQOLの向上をめざすことはとても重要だと考えています。QOL評価票だけでなく、いろんな角度からQOLの向上について今後も研究を進めていきます。
②スモン病の調査・研究
当大学では、同じく難病であるスモン病の調査・研究も続けています。後遺症に苦しんでいらっしゃる患者さん達の現状を十分に把握し、QOLの向上に向けて何かサポートできることはないかと考え取り組んでいます。