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Blog 関西医療大学NOW!

 ヘルスプロモーション整復学ユニットの伊藤です。本学は元々鍼灸を教える短大からスタートしたので、学内では今も東洋医学がポピュラーです。東洋医学と言えば、鍼(はり)、お灸、漢方薬などが有名ですが、これらの東洋医学的治療法はどのような仕組みで効いているのか、実はまだよくわかっていません。私自身は鍼灸師ではありませんが、同僚の鍼灸師の先生と話したり、治療を受けたりしているうちに「鍼はどんな仕組みで効くのか?」という点に興味が湧いてきました。
 私のホームグラウンドは分子生物学です。分子生物学では「どういう物質が、どんな化学反応によって生体に変化を起こすのか」という視点から、全ての生命現象を理解しようとします。ですから「鍼でツボを刺激すると、どのような物質の変化が体内で起こるのか」という事を突き止めたいわけです。
 それには動物実験や細胞を使った実験が欠かせません。鍼を打った後に、血液や臓器を採取して成分を調べるわけですから、ヒトで研究するには困難があります。そこでマウスやラットを使って実験することにしましたが、これにも大きな困難があります。まず「動物のツボ」がわからない。調べてみると、(誰がどうやって調べたのかわかりませんが)実験動物にもヒトと同じようにツボがあることがわかりました(図1)。これを参考に実験をしています(図2)。緑色の細棒が鍼です。
 学内の鍼灸学ユニット、スポーツトレーナー・ユニット、基礎医学ユニット、臨床検査学ユニットなどの先生方と色々やってみた結果、実験動物でも特定のツボに鍼を打つと、血液中の特定のホルモン濃度が変化する可能性が浮上しました。現在、「ホルモン濃度が変化するのは、鍼刺激によってどの物質が変化するからなのか」を調べているところです。
 幸い多くの学生が興味を持ってくれて、一緒に研究をしてくれています。近い将来に、鍼灸治療の仕組みを分子の言葉で説明できるようになればいいなと思っています。