FACULTY
/GRADUATE SCHOOL
Blog 関西医療大学NOW!

 作業療法研究ユニットの山田です。皆さんは、サッカーや野球、バスケットボール等のスポーツに取り組みたいと思った時に、どのような行動をとりますか。クラブ・サークル活動に参加する、スポーツクラブ施設に行く、友達に声を掛ける等々、直ぐにスポーツに取り組むことができる環境を作ることができると思います。
 それらスポーツ活動に充分に取り組むことが難しい方々が存在することご存じでしょうか。そう、障害がある方々です。
 今回は、障害がある方へのスポーツ活動の取り組みを紹介したいと思います。
 東京で開催されたパラリンピックにおいて、障がいがある方々がスポーツに取り組む姿を認識された方々が増加しました。しかし、障がいがある方々がスポーツに取り組める環境が充分となったかと問われると、正直に「Yes」と言い難いのが現状です。
スポーツ庁は、2022年3月に第3期スポーツ基本計画を示し、『「誰もが「する」「みる」「ささえる」スポーツの価値を享受し、様々な立場・状況の人と「ともに」スポーツを楽しめる環境の構築を通じ、スポーツを軸とした共生社会を実現する』との目標を掲げています。
その中で、令和3年度の成人の障害者の週1回以上のスポーツ実施率が31.0%と増加傾向を示した一方で、成人一般の56.4%と比べ大きな隔たりがあるとしています。また、小中高等学校に在籍している障害児の学校における障害児のスポーツ環境は十分でないことを示しています。
 私たちが取り組みを行っている知的障がいの方々に目を向けていきたいと思います。
 令和4年度の障害児・者のスポーツライフに関する調査研究において、知的障がい者は、身体障がい、精神障がい、聴覚・言語障がいなどの他の障がいに比べて、地域住民が中心となったクラブ・同好会・サークルへの参加が非常に少なく、障害者優先施設でのスポーツ・サークル活動が多くなっており、クラブ・サークル活動への参加は限られた場所となっています。
知的障がい者は、支援学校卒業後の社会活動が減少することが報告されています。更に、支援学校卒業後においてスポーツニーズはあるが、移動手段がないため、参加する機会・場所が少ないこと、スポーツの指導において障がい特性への配慮が少ないことが課題として挙げられています。
 知的障がいがある方のスポーツ環境への課題が多く挙げられていますが、大阪府下には継続してスポーツ活動に取り組んでいるスポーツチームが存在しています。
 知的障がい者サッカーチームを対象に調査研究を行わせて頂き、知的障害がある方々がスポーツ活動に取り組みやすい環境を明らかにすることができました。

 知的障害がある方々は、その障害特性から、先を見通すこと、複雑な内容を把握することなどに困難を生じることが多くあります。また、それらの困難な状況に対面した際に、怒ることや力に訴えるなどの直接的な行動に至りやすいことがあります。これらの行動は、障害がないとされる方々にもしばしばみられます。障害がある方には、それらの行動をとる頻度が多い様に思います。また、物事を整理して話したりすることができず、周囲の方々と十分なコミュケーションをとる事に苦手意識を持っている方もおられます。その為、伝えたいこと、聞きたいこと等の確認ができず、集団内で孤立していくことがあります。
 それらの特性を踏まえつつ、知的障がい者サッカーチームでは、以下に挙げる参加しやすい環境を作っていました。

1)参加者の悩み事等を聞き、生活生活リズムの構築や生活管理を促す声掛けなどを行っていた。
2)スマホやメール等を用いて、活動スケジュール日時や場所などを連絡し、参加者・支援者が相互に連絡を取り合っていた。
3)車での送迎体制を取る、集団行動で公共交通機関を利用し、練習・試合場所等への移動を参加者が助け合い行っていた。

 このような支援により、参加者の悩み事が解決し、参加者同士の交流が増え社会的な活動の機会が増加し、参加者の社会性が向上していました。
 今後は、知的障害がある方の支援学校からの卒業後にむけた継続したスポーツ環境つくり、発達期の障害がある児童のスポーツ環境作り・スポーツ活動内容の検討、それらの成果を示していく等の取り組みを行っていきたいと思っています。それらの活動を一緒にできる人たちが増えていけばいいなと思っています。興味ある方は、是非、お声掛け下さい。