2024年09月06日
なぜ、内側広筋のトレーニングにこだわるのか? その2(谷埜 予士次)
理学療法学ユニットの谷埜です。
私は理学療法士として膝関節術後患者さんの治療を担当する機会があります。その際、“よく曲がる” “しっかり伸びる” 膝の獲得を目指しています。以前の研究紹介では、しっかり膝を伸ばすためには大腿四頭筋の筋力が大切で、特に内側広筋の機能に着目して筋力トレーニングに活かすための研究をしていること、そして、その時のテーマは内側広筋と他の筋肉間との協調性であることをご紹介させていただきました。
最も効率よく膝を伸ばす筋肉は、大腿四頭筋のなかでも中間広筋であることが古くからいわれています(Lieb FJ, et al. J Bone Joint Surg Am. 1968の大腿切断肢を用いた検討が最も古いかな? と思います。その後も筋電図学的、超音波画像による報告があります)。2018年に内側広筋は広範囲にわたって中間広筋と連結をしていて、中間広筋の作用を助ける可能性があるという興味深い論文が発表されました(Grob K, et al. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2018 )。これを受けて、構造だけでなく機能的にはどうであるかということについて筋電図学的に検討してみたところ、興味深い結果が得られました(Tanino Y, et al. Isokinet Exerc Sci. 2024 )。大腿四頭筋を支配する大腿神経を電気刺激して筋電図を記録した際、外側広筋→内側広筋→中間広筋の順番で筋活動がみられました(左下の図)。これは筋電図記録のための電極を貼り付ける位置の影響から当然の結果だと思いますが、音刺激を合図に膝を伸ばすといった随意的に大腿四頭筋を作用させた場合は、内側広筋→外側広筋→中間広筋の順番で筋活動がみられました(右下の図)。これは中間広筋の緊張を高めるため、中枢神経系から内側広筋が事前に活動するように調整されているのではないか? ということが考えられました。まだまだ機能的に明らかにされていない点があるかと思いますが、現在はこの内側広筋のトレーニングによって、膝の痛みが軽減するのか? 身体機能には具体的にどのような効果を及ぼすのか? についての研究を進めています。またご紹介できる機会があればと思っています。
↓は筋電図の開始を示しています。