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Blog 関西医療大学NOW!

 鍼灸学ユニットの木村です。
 古来、医療における有用な診断法の一つが触診で、生体臓器や病変の形、大きさ、硬さが指標とされてきました。現代医学では病変の形や大きさはX線やMRI、CTなどの画像診断法を用いることで評価することができるようになりました。しかし、「硬さ」の情報を正確に把握することは難しいのが現状です。一方、多くの病変は線維化、浮腫などにより正常組織と比較して硬いことが経験的に知られています。これまで、硬さの評価には体表から機器を押し込み、力―変位関係から評価する押し込み式の組織硬度計が用いられてきました。しかし、押し込み式の組織硬度計には筋だけではなく体表の皮下脂肪等の影響があり、特定の組織が硬度変化の原因となったのかが分からないという問題があります。また、体表面から組織へ数回、圧迫を加えて計測する手法であるため、それ自体が組織への刺激となる可能性も指摘されています。近年、超音波Real-time Tissue Elastography(RTE)という超音波診断装置によって組織の硬さをリアルタイム画像で評価する技術が考案されました。組織を圧迫すると柔らかい組織ほど変形し、硬い組織はあまり変形しないという特性を利用した方法で超音波診断装置のプローブを利用して,超音波の進行方向に圧迫をした際に生じる変形をリアルタイムに記録、解析します。RTEは押圧に対する組織毎の硬さ測定が可能です。そのため、臨床では乳腺や肝臓、リンパ腺の領域での腫瘍の診断に応用されています。一方、肩こりやスポーツ後の筋緊張の緩和に鍼通電療法は応用されていますが、筋の硬さへの効果を客観的に評価する上で、RTEは有用な技術であると考えられます。そこで、私たちは、下腿部への鍼通電療法が腓腹筋の筋硬度に及ぼす影響について1)カーフレイズ運動前後の筋硬度の比較、2)カーフレイズ運動後の鍼治療による筋硬度の変化についてRTEを用いて検討しました。
その結果、カーフレイズ運動後に筋硬度が増加することや鍼通電刺激を行うと、鍼通電を行わない場合に比べて、筋硬度の回復が促進されることが分かりました。今回は腓腹筋の筋腹にある承筋穴と承山穴という経穴に鍼通電を行いましたが、筋腹より筋腱移行部の方が筋緊張緩和に有効ではないかという点や周波数などの刺激条件の検討が今後、必要だと思います。

Yamashita S, Kimura K.:Changes in Muscle Hardness induced by Exercise Load and the Influence of Electro-Acupuncture. Med Acupuncture, DOI:10.1089/acu.2024.0018 2024

筋硬度の計測(左:エラストグラフィ画像、右:Bモード画像)