2019年03月15日
中国伝統医学に隠された謎を解く関西医療大学
はり灸・スポーツトレーナー学科 王 財源
鍼灸は2000年前の古代中国に発祥しました。その当時は現在のような細い鍼は存在せず、どちらかと言えば太い鍼でした。このことから、当時、安全性を考えて体の奥深い場所にまで鍼を刺さなかったようです。
鍼を深く刺入するようになったのは、鉄の加工技術が発展してからのことです。当然、鍼を細くする技術は、武器の製造技術の水準が高くなり始めた、春秋戦国時代に飛躍的な発見を遂げました。では、それ以前の刺さない鍼の時代に、どのように鍼が扱われていたのかという疑問が残ります。そこで古代中国の歴史をさかのぼってみましょう。
本来、東洋医学的思想を背景に作られた、伝統医療の特徴は、筋肉に鍼を入れないで、皮膚のみを刺激する方法が基本であったということです。何よりも、そこには人体で生理的な活動を助ける「気」という物質がありました。日常の私たちの生活に「気」の存在は欠かすことできないぐらい溶け込んでいます。
例えば「やる気」「本気」「気分」「気位が高い」など、「気」の実体はみえなくても、知らない間に「気」の存在を認め合っているのです。人体の「気」は身体を構成するためのエネルギーの源であり、「気」を失うとさまざまな病気が起こります。この「気」を補うことで、元気な肉体を作り上げ、病気になりにくい体質にします。おそらく「気」の養生法の誕生により、ツボや鍼・灸の技術がさらに発展したようです。現在のように鍼を肉体に刺すような物理刺激ではなかったのです。
このことからも、鍼が病気の治療に優しい医療だったのでしょう。今、使っている鍼は、漢代に生まれた9種類の金属製の鍼が改良されて誕生しました。これが古代九鍼と呼ばれているものです。古代九鍼のなかでも、毫鍼と呼ばれている鍼が、現在の私たちが鍼治療に使用している鍼です(写真、上から7番目の鍼が祖型)。鍼治療が始まった頃には、皮膚を切って治していました。私たちの祖先は、肌を切ることで病気を治す仕組みを発見し、その一つに「気」の流れを改善することで、運動器疾患や内臓の病気を取り除けるということを体験しました。そして体の表面にある特定な場所の肌を擦る、切ることで、病気が治ることを発見し、それを活字文化に託して現代の私たちに残してくれたのです。
実は中国医学の誕生が、流れる「気」を鍼でコントロールすることにあったのです。それが現在の鍼治療のルーツなのです。
関西医療大学には多くの古代中国の資料が所蔵していますので、伝統医学の隠された真実を、本学で解き明かしてみては如何でしょうか。
写真 古代九鍼のレプリカ(関西医療大学所蔵)撮影:王