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Blog 関西医療大学NOW!

 理学療法学ユニットの山﨑航です。前回は方向転換のバイオメカニクスの研究について、お話しました。今回はデータの見方にも触れつつ、停止する動作の研究について紹介します。

 私達は何かの目的のために歩行を行います。そして、その最中に立ち止まり、様々な行為を行います。停止動作も前回の方向転換動作と同様に高齢者が転倒しやすい場面の一つと言われています。ご高齢の方が急に立ち止まった際に、バランスを崩して前や後に転んでしまう様子をイメージしてみてください。その停止動作で必要なことは当然ながら、動いている状態から止まる、つまり「減速」することです。前回の研究紹介の方向転換動作でも「減速」が一つのキーワードでした。そのため、転ばずに「減速」して停止する動作には身体のどこの筋力が必要なのか、を研究しました。まずは下のグラフを見てください。

 左側のグラフが歩行動作中の股関節屈曲伸展モーメント、右側が停止動作の股関節屈曲伸展モーメントを表しています。歩行動作と停止動作を比べることで、停止動作に必要な筋力が分かります。縦軸は正の値が股関節屈曲モーメントを、負の値が股関節伸展モーメントを表しています。横軸は、右足を床につけたところから開始し、右足が離れるまでの時間を100%に変換して表しています。色とりどりの線は、それぞれ20人の被験者のデータを色分けしています。しかし、これだととても見にくいと思います。

 しかし、これだとどうでしょうか。色とりどりの線が平均されて一本の線になりました。平均することにはメリットとデメリットがありますが、異なる二つの条件の多くのデータを比較する際に有効な方法です。これで比較し易くなりましたので、改めて結果を見ていきましょう。
 股関節屈曲モーメントはほとんど同じ値を示していますが、股関節伸展モーメントは停止動作の方が大きな力が必要となっていると言えそうです。研究では、下肢の様々な関節に生じるモーメントを算出して、必要な筋力を分析しました。一部の結果を紹介すると、歩行動作に比べると停止動作では股関節外旋モーメントもより必要となっていました。股関節伸展モーメントも股関節外旋モーメントも殿部(お尻)にある筋の力だと思ってください。つまり、停止動作では歩行動作と比べて、より強い殿部の筋力(股関節伸展モーメント、股関節外旋モーメント)が必要になっていることが分かりました。ということは、停止動作で転ばずに「減速」するためには、殿部の筋力を鍛えたらよいと言えそうです。

 しかし、巷では下肢の前面にある筋はブレーキ筋、後面にある筋はアクセル筋、などと呼ばれることがあります。殿部の筋は当然、下肢の後面にありますので、矛盾している?どっちかが嘘をついているのでは、、、と疑問に思われる方が入るかもしれません。そんな疑問を抱いた方は、是非、理学療法士を目指しましょう!!実はどちらも嘘ではありません。この違いは、筋の役割や姿勢・動作と非常に密接な関わりを持ちます。記事が長くなってしまいますので、この続きは三回目にお話させてください。もっと知りたい! 興味がわいてきた!という方は、是非、本学に来て学びませんか?!また、同じ分野の研究を始めてみたい、という院生の方も大歓迎です。